自己評価(1989年4月~1992年3月)

1.研究活動の総括

日本の労働政治・行政を実証的に分析するべく1989年8月から9月にかけて労働団体トップリーダーヘのサーベイ・リサーチを行った。しかし1989年11月から1990年2月まで網膜剥離を患い入院したため、分析が予定から大幅に遅れた。その後戦後日本の政治経済体制の中での労働政治・労働行政を欧米諸国との比較の視座において分析する作業を続けている。そのいくつかの成果は論文の形で発表した。

2.公表された論文等

  • 論文
    • 「戦後労使和解体制の形成:戦後日本政治経済のマイクロ・マクロ・リンク」年報政治学1991(1992年)
    • 「1980年代日本における利益団体政治の変容:1980年・1989年労働団体リーダー調査結果分析から(1)」神戸法学雑誌41巻2号(1991年)
    • 「行政機関の自律性と能力:労働時間規制行政を手がかりとして」神戸法学年報6号(1991年)
    • Labor Ministry 0ffensive in Japan:A case of autonomy of thestate agency,K0BE UNIVERSITY LAW REVIEW,No.23.1989
  • その他
    • 〔書評〕高梨昌「新たな雇用政策の展開」日本労働研究雑誌、No.374(1990年)
    • 「労働時間規制と行政スタイルの変換」総務庁長宮官房企画課・社会経済の変化と行政スタイルの変容に関する調査研究報告書(1990年)(なお同報告書について、1991年3月21日に行政管理研究センターで研究会を行った。その内容は季刊行政管理研究No54/No55(1991年)に収録されている。)
    • 「地方における行政評価機能の課題と在り方」総務庁長官官房企画課・地方における行政評価機能の在り方に関する調査研究報告書(1989年)
    • 「淡路地域のリゾート開発」今村都南雄編著・リゾート法と地域振興(1992年)
    • 「市議会の運営と構成」「議会と行政管理」「市政の課題」大津市議会史記述編(1991年)
    • 「80年代における政府・労働関係の変容」中央調査報No.400(1991年)
    • 「内なる危機・外なる危機前記」アステイオン20号(1991年)
    • 「自民党政治のパフォーマンス」エコノミスト3000号(1992年)

3.教育活動

  • 学部講義:毎年前期に行政学を担当している。講義では、歴史的民主化の進展に対して如何なる形で政治的秩序が形成・維持されてきたかという視点から以下の内容を講じている。
    • 近代国家形成と行政発展の比較論
    • 日本における政治発展と近代国家形成
    • 行政の発展と行政学説史
    • 政治学の諸理論における行政の位置付け
    • 日本官僚制の政治社会学・政治経済学
    • 政策決定・執行の理論
    • 現代日本における政策決定・執行(官僚制、議会、政党、中央地方関係)
    • ストリート・レベル宮僚制論
    • 行政組織論(組織と管理)
    • 行政の裁量と責任論
  • 大学院:1990年度後期の特別講義では先進民主主義国の政治経済に関する諸理論を1991年度後期の講義では福祉国家論をそれぞれ取り上げて、リーディングリストを学生に与え、古典的議論から最新の研究業績までを通観させるよう試みた。そのなかで理論仮説検証の方法論についても学生に自覚を持たせるよう努力した。なお最後にリサーチペーパーを課した。

4.学会報告・ワークショップ等

  • 「行政機関の自律性」(日本行政学会年次大会、1990年5月)
  • Institutionalizing Labor Accommodation in Postwar Japan(アメリカ政治学会年次大会、ワシントン,DC.1991年8月。日本政治学会から派遣され、同上ぺーパーを提出し報告した。)
  • A Tale of Twin Industries:Labor Accommodation in the Japanese Coal and Steel industries(日本学術振興会・米国SSRC後援「現代日本における公私利益の交渉に関するワークショップ」に上記ペーパーを提出し報告した。ハワイ、1990年8月24日28日。)

5.その他の学外活動

  • 第9回TOYP大阪会議オープンフォーラム「地球共有社会におけるグローバルな「自由都市」」コーディネーター(大阪青年会議所、1989年9月12日)
  • 日米文科系学術交流センター主催・大阪アメリカン・センター、大阪商工会議所共催シンポジウム「規制緩和:日米比較」において「労働行政規制緩和の日米比較」報告(1990年12月7日)
  • スタンフォード日本センター(KCJS、PR0GRAM,1992年1月-3月)及びセントキャサリンズ校神戸インスティチュート(オックスフォード大学、1991年1月-3月)でCONTEMPORARY JAPANESE POLITICSを講義。

6.今後の研究活動の展望

1992年は5月・6月にスウェーデンヘ在外研究に、8月からは2年間米国へ在外研究へ出かけることになる。この機会を利用して、日本の労働政治・行政を比較の視点から検討する博士論文を完成させたいと考えている。

なお、米国での在外研究の2年目には、初等・中等教育をめぐる政治・行政過程の日米比較研究をスタートさせる予定である。

第3の課題は、戦後日本の政治経済体制と行政制度に関する研究を進め、既発表の論文を含めて単著をまとめることである。