自己評価(1995年4月~1998年3月)

1.研究活動の総括

コーネル大学に94年に提出した博士論文を、コーネル大学出版会の政治経済シリーズとして出版しとりあえず研究の区切りをつけることができた。現在最終研究成果の公表段階にきているものとして以下の二つの研究プロジェクトがある。

  • 「中央地方関係と経済発展」に関する世界銀行プロジェクトを京都大学の村松岐夫教授と組織し3回の国際会議を開催し、現在参加者の論文の最終編集作業を行っている。
  • 震災と行政システムの対応に関して、文部省特定研究の一部として、被災各地方自治体の課長級職員に対するアンケート調査及び個別の聞き取り調査に基づく研究を行い研究参加者の論文をまとめた研究報告書の出版を準備している。

それ以外現在参加をしている主要なプロジェクトとしては、

  • ヨーロッパ政治学会(ECPR)と日本政治学会の共同研究
  • ワシントン大学とマックスプランク研究所が主催する日独比較研究

がある。これらは、1999年中に研究成果が出る予定である。

アメリカ政治学会では、95年(シカゴ)、96年(サンフランシスコ)年次大会に応募した論文プロポーザルが採用され研究報告を行った。なお、1996年1月には、ポートアイランド国際会議場で開かれた国際シンポジウム・戦後50周年記念「国際社会の中の戦後日本」(主催:神戸大学・共催:兵庫県、読売新聞社)に参加する一方、その事務運営に当たった。

2.公表された著書・論文等

  • 著書
    • 『はじめて出会う政治学』(真渕勝・北山俊哉と共著:有斐閣、1997年)
    • DISPARAGED SUCCESS: LABOR POLITICS IN POSTWAR JAPAN (Cornell University Press, 1998).
  • 研究論文
    • "Institutionalizing the Active Labor Market Policy in Japan: A Comparative View," in Hynug-ki Kim, Michio Muramatsu, T.J.Pempel, and Kozo Yamamura, eds., JAPANESE CIVIL SERVICE AND ECONOMIC DEVELOPMENT (Clarendon-Oxford University Press, 1995).
    • '"Market Friendliness" in Public Policy', (Kobe University Law Review, No.29, 1995).
    • 「鳩山・岸路線と戦後政治経済体制:市場の「政治性」への一考察」(『レヴァイアサン』20号、1997年春)
    • "Cooptation or New Possibility? Japanese Labor Politics in the Era of Neo-Conservatism" in Michio Muramatsu and Frieder Naschold, eds., STATE AND ADMINISTRATION IN JAPAN AND GERMANY: A COMPARATIVE PERSPECTIVE ON CONTINUITY AND CHANGE (de Gruyter, 1997).
    • 「新保守主義下の日本の労働政治:衰退か新しい可能性か」(『レヴァイアサン』17号、1995年秋:上記論文の進藤裕之による翻訳)
    • 「震災と行政組織管理」(『神戸法学雑誌』46巻4号、1997年3月)
  • その他
    • 「竹下登--保守党政治完成者の不幸」渡辺昭夫編『戦後日本の宰相たち』(中央公論社、1995年)所収
    • 「宇野宗佑--自民党機能不全の象徴」同上書所収
    • 「震災と行政システムに関するアンケート調査の研究報告」(依田博・刈谷寿夫と共著:『兵庫県政学』創刊号、1995年8月)
    • 「二大政党制という妖怪」(『アステイオン』40号、1996年秋)
    • 書評 Competition and Cooperation in Japanese Labour Markets, by Carl Mosk (Journal of Japanese Studies, 23-2, 1997)
    • 「座談会 日本政治学の課題と展望」(加藤淳子・川人貞史との鼎談)『レヴァイアサン』臨時増刊号、1998年冬号所収。

3.学会報告・ワークショップ等(ペーパー・報告書の形になったもののみ)

  • '"Market Friendliness" in Public Policy'; ECPR Joint Session of Workshops Planning Sessionで上記ペーパーを報告した。Bourdeaux, France, April 27 - May 2, 1995.
  • "Cooptation or New Possibility? Japanese Labor Under the Conservative Resurgence";アメリカ政治学会年次大会で、上記ペーパーを発表した。the 1995 APSA Annual Meeting, Chicago, August 31-September 3, 1995.
  • 「55年体制下の労働政治」;1995年度日本政治学会共通論題で、上記ペーパーを発表した。1995年10月7日、法政大学。
  • '"Market Friendliness" in Public Policy, revised version'; Globalisation and Capitalist Diversity会議、European University Institute, Florence, Italy, May 2-May 5, 1996で上記ペーパーを報告した。
  • "At the Pleasure of Local Chief Executive: The Agency Delegated Function and Its Policy Implications";世界銀行プロジェクト「中央地方関係と経済発展」の会議で上記ペーパーを報告した。August 3-6, 1996, Turtle Bay Hilton Hotel, Hawai'i.
  • "Labor Politics and Skill Formation in Historical Perspective: Germany and Japan Compared" Co-authored with Kathleen Thelen, Northwestern University;アメリカ政治学会年次大会 the 1996 APSA Meetings, August 1996, San Franciscoで上記共著ペーパーを報告した。
  • "The Relation between Central and Local Governments: Recent Reforms in Japan" と題する報告を行った。University of Oslo, Institutt For Statsvitenskap, Oslo, September 27, 1997.
  • "Institutionalizing Postwar Japanese Political Economy: Industrial Policy Revisited";The Third Conference of the State and Society in East Asia Network会議にて上記ペーパーを報告した。 Copenhagen and Gentofte., September 28-29, 1996.
  • "The End of Anomaly? Employment Policy Development in Japan and Sweden";ヨーロッパ政治学会・日本政治学会共同プロジェクト会議にて上記ペーパーを報告した。都ホテル、京都、1997年3月3日ー6日。
  • "Labor Politics and Skill Formation in Historical Perspective: Germany and Japan Compared"(Co-authored with Kathleen Thelen, Northwestern University)の修正版を、Germany-Japan Project会議(ワシントン大学・マックスプランク研究所主催)にて報告した。Seatle, April 10-12, 1997.
  • "The Rise of Non-Market Training Regimes: Germany and Japan Compared" (Co-authored with Kathleen Thelen, Northwestern University);Germany and Japan in the 21st Century: Strengths Turning Into Weaknesses?会議(マックスプランク研究所・ベルリン日独センター主催)において上記共著ペーパーを報告した。Berlin, January 22-23, 1998.
  • 講義録「成熟社会における行政の役割」兵庫県政学会平成9年度第2回セミナーVol. 2.

4.教育活動

学部行政学4単位95年後期(昼間、夜間)、97年前期(昼間)、後期(夜間)
日本政治論2単位95年前期、97年前期
政治経済論2単位96年後期
基礎ゼミ2単位96年前期
行政学ゼミ4単位95-97年
大学院行政学特殊講義
現代政治理論
非常勤甲南大学(行政学、政治過程論)
Stanford Japan Center (Political Economy of Japan)

5.今後の研究活動の展望

98年9月に出版予定の博士論文日本語訳を脱稿したので、それに引き続いて戦後日本の労働戦線統一の動きを分析する単著の執筆に当たっている。99年度からは、日本政治学会・ヨーロッパ政治学会共同プロジェクト第2波のサブプロジェクト「危機の政治学:日欧比較」を組織し、3年間で成果を出版するべく努力する。なお、96年以来日独労働政治の比較につき共同研究を行っているキャシー・セレン教授と英文共著書を出版する方向で現在仕事を行いつつある。