自己評価(1992年4月1日-1995年3月31日)
1.研究活動の総括
1992年5月から6月にかけてストックホルム大学客員研究員としてスウェーデンの労働政治を調査研究し、1992年8月から1994年9月までは、コーネル大学政治学部客員助教授(講義担当学期以外は客員研究員)として、研究教育に従事した。この調査研究をもふまえて、1986年以来中断を挟みつつも継続してきた日本の戦後労働政治の比較政治経済学的研究をとりあえず完成させ、コーネル大学に博士論文(1994年)として提出した。
2.公表された論文等
- 論文
- 「労働の参加なき勝利? 雇用政策の政治経済学」『レヴァイアサン』1992年、秋号。
- "A Tale of Twin Industries: Labor accommodation in the Japanese private sector," in Gary Allinson and Yasunori Sone, ed., Political Dynamics in Contemporary Japan, Cornell University Press, 1993年.
- 「統治過程と行政官僚制: 統治連合の拡大とその制度化」『神戸法学年報』1994年。
- 「政治経済環境の変化と行政システム」西尾勝・村松岐夫編『講座行政学 第3巻 政策と行政』有斐閣1994年。
- 「行政制度と市場メカニズム-戦後日本の雇用政策を手がかりに」『季刊行政管理研究』1995年3月。
- その他
- Disparaged Success: Labor Politics in Postwar Japan, 博士論文(Ph.D. Dissertation) コーネル大学1994年。
- "Institutionalizing the Active Labor Market Policy in Japan: A Comparative View," EDI Working Paper # 93-36, 世界銀行、1993年.
- 「鳩山・岸路線と戦後政治経済体制:市場の「政治性」への一考察」文部省科学研究費重点領域研究『戦後日本形成の基礎的研究 Occasional Paper #13』1994年。
- 「スウェーデンの謎:スウェーデン福祉国家と経済合理性」京都大学法学研究科『産業国家の福祉政策に関する研究』1994年。
3.教育活動
- 学部講義:1994年後期、政治経済論(戦後日本の政治経済の発展をそれに行政制度が与えた影響に注目して講じた。)
- 大学院:1994年後期、行政学特殊講義(合理的選択論と制度論の理論的統合の可能性を近年の実証研究を題材に検討した。)
4.学会報告・ワークショップ等
- "Party Politics and Industrial Policy in Japan: How political discourse creates market"、ESRC政府産業関係に関する国際研究集会、Exeter 1992年5月に上記ペーパーを提出し報告した。
- "Bringing Labor Back In: Changing Labor Politics in Japan"、国家と行政に関する日独研究集会に上記ペーパーを提出し報告した。1993年3月25-26日、ベルリン学術センター。
- "Labor Politics in Japan: A Theoretical Perspective" Southern Japanese Seminarで上記ペーパーを提出し報告。The Southern Center For International Studies, 1993年4月24日アトランタ。
- "Cooptation or New Possibility? Japanese Labor Politics in the Era of Neo-Conservatism" 国家と行政に関する日独研究集会に上記ペーパーを提出し報告した。1994年3月、京都。
- 1994年アメリカ政治学会年次大会分科会Explaining the Transformation of Japan's One-Party Dominance in the Changing Worldにおけるコメンテーター。1994年9月1-4日、ニューヨーク。
- 世界銀行プロジェクト「経済成長における政府の役割」研究会において、コメンテーターをつとめる。1995年2月10-11日、スタンフォード大学。
5.その他の学外活動
- "The Internationalization of the Japanese Economy and Its Impact upon Japanese Domestic Politics" ストックホルム大学アジア太平洋研究所での報告、1992年5月。
- "Political Realignment? The Changing Role of Labor," at The Southern Center For International Studies, Annual Asia-Pacific Seminar, 1993年4月23日、アトランタ。
- "Barren Marriage of the Left and the Right? Political Reform in Japan" 及び"Who is to Blame? Bureaucracies and Reform"というテーマでの講演を行った。ニューヨーク・シカゴ・デトロイト各日本協会主催1994年Japan Caravan、1994年5月1-7日、デトロイト・シカゴ。
6.今後の研究活動の展望
コーネル大学に提出した博士論文を米国で出版する作業が進行中であり、それを完成させるのが第1の課題である。同時に博士論文の日本語訳を出版する計画を立てている。第2の課題は、現在たちあげつつある二つのプロジェクトをこれからの3年間に完成させることである。
第1は、中央地方関係が経済成長に与える影響に関する比較研究を世界銀行と共同で行う。第2は、ヨーロッパ政治学会と日本政治学会の共同プロジェクトとして日欧の政治経済体制の比較研究を行う。
第3の課題は、戦後日本の政治経済体制と行政制度に関する研究を進め、既発表の論文を含めて単著をまとめることである。